太平洋から富士山日帰り


【登山日】H19.7.28
【コース】
田子の浦(1:00)→最終コンビニ(2:00)→標高1500mスカイライン分岐(4:03)→新五合目(5:54〜6:20)
→六合五勺(7:07)→七合目(7:40)→八合目(8:10)→九号五勺(8:55)→富士宮(9:25)→剣ヶ峰(9:42〜10:00)
→新五合目(11:32〜12:00)→田子の浦(13:23)
【自転車】BASSO REEF 2007モデル



 「日本海から剱岳日帰り」、「日本海から白馬岳日帰り」と続いてきた海抜0mからの山登りシリーズ。その一つの終着点が富士山だろう。なぜなら富士山は単純標高差が日本一で、しかも海から近いからである。標高差3776mを登ることは大変だろうが、昨年の白馬岳日帰りで累積標高差3300mを経験したことで、富士山が手の届くところにきたことを感じていた。

 今回のポイントはなんと言っても距離にして48km、標高差2370mの自転車登りだろう。これは未体験の標高差であり、昨年の蓮華温泉よりも約900mも高い。今回はその対策として、新兵器「BASSO REEF」を投入することにした。軽量なロードバイクを持ち込むのは大人気ない気もしたが、ランドナーだとかなり時間がかかるような気がしたので、速いロードを選択した。ロードは悪路や激坂のあるコースには向いていないが、今回は路面も良く、斜度は最大10%程度で激坂もないことからロードで問題ないと判断した。そのため、今回の山行に合わせてロード用にリアキャリアとフロントバッグを準備した。ペダルはトゥークリップにしてハイキングシューズで登ろうかと思ったが、ペダリング効率を重視してビンディングペダルで行くことにした。ハイキングシューズを積むことで荷物は重くなるが、先日リアスプロケットを25Tから27Tに変更したので大丈夫だろう。

 山登りは標高差約1400mほどなので、伊吹山1個分と考えれば親しみやすい。アップダウンもなく効率良く標高を上げられそうだ。しかし、富士山は初めてなので高山病が少し心配である。あと、噂に聞く登山道の混雑も心配だった。富士山は登れるシーズンが短いので、天候の安定している梅雨明け直後を狙うことにした。

 

 前日、渋滞を避けるため早朝に出発し、お昼前に富士市に到着。スタート地点の下見をした後、クルマでスカイラインを走って道順の確認とイメトレをした。スーパー銭湯で汗を流し、クルマを田子の浦灯台近くの堤防沿いに停め、チューハイを飲んで21時前に就寝。夏山は雲が湧きやすいので、1時起床1時半出発の予定だった。しかし、23時半にメールの着信音を目覚ましと間違えて飛び起きる。その後再び寝ようとしたが、今度は不審車の見回りに来た警察に起こされ、結局0時半にあきらめて準備を開始する。


愛車の中で愛車と眠る今日の寝床                         出発準備完了


 真っ暗な太平洋を眺めて1:00出発。長い一日になりそうだ。深夜だと言うのに富士市内は結構クルマが多く閉口する。今回はナイトラン対策として、フロントにLEDランプを取り付けて頭にヘッドランプを着け、リアは点滅式LEDを点灯させた。さらに、自転車に反射テープを貼り、反射タスキを肩にかけてクルマからの視認性を向上させた。しかし、上ハンドルにLEDランプをつけたらフロントバッグに光が邪魔されることがわかり、場所を付け替えたりして試行錯誤しながら走った。さらにダンシングをした際に、リアキャリアの荷物の固定が甘かったので荷物がずれ落ちてしまった。コンビニで荷造り紐を手に入れて縛り直す。また、ヘッドランプの電池が弱り、予備電池も持ってなかったためコンビニで買った。このあたりは準備不足が目立った。

 標高250mの最終コンビニで補給をして、真っ暗なスカイラインへ。斜度9%の看板が現れ、ひたすら軽めのギアで足に負担をかけないように走っていく。ビンディングペダルを生かすペダリングを心がける。辺りは街灯もなく、真っ暗で気持ち悪い。標高700m辺りからヘアピンが続いていく。時々クルマに抜かれていく。きっと富士山に登るのだろう。

 3:00頃、標高900m地点で汗だくになって休憩。まだまだ暑い。ようやく六甲山一個分が終わった。標高1000m付近からは東方向へほぼ直線の登りとなる。この区間は斜度が比較的緩かったが、そのため休憩なしで標高1500mまで登ったら結構疲れた。ここがスカイラインの分岐点。周囲はガスに包まれていた。アミノバイタルでドーピングして、さらに上を目指す。


標高1500mのスカイライン分岐にて                               明るくなり、富士山が姿を現した


 ここからは再び9〜10%程度の坂が続くが、時折斜度が緩くなるので助かった。九十九折れの区間に入る頃明るくなってきた。やがて前方に広大な山腹が見えてきて、やがて富士山の山頂が見えてきた。今回初めてのご対面である。山頂が見えればモチベーションも上がるのだが、あそこまで登るのかと思うとぞっとする。標高2000mを過ぎると展望が良くなり、東を見ると南アルプスとそれに向けて影富士が見えていた。標高2100m辺りでさっき抜いていったばかりのクルマがガードマンに止められている。何かと思えば、五合目の駐車場が一杯で上からずっと縦列駐車が続いていたのだった。五合目まで4kmもあるのにここから歩かされるとは気の毒だと思いつつ、さっきクルマで抜いていった人たちを自転車で抜き返す。


標高2100mで日の出をを拝む                                 影富士と南アルプス


 5:54、新五合目にやっと到着。長かったが、5時間を切ることができた。自転車を目立たないところに停めて鍵で木にくくりつける。BASSOのお陰か体力にはまだ余裕がある。さあこれから登山モードだ。登山は自転車と使う筋肉が違うので気が楽である。レーパンを脱いで山用長ズボンに履き替え、ビンディングシューズを脱いでハイキングシューズに履き替える。売店で1Lのペットボトルと食料の予備を買って6:20に新五合目を出発。


標高2100m付近の登り。カーブでに駐車防止の障害物が置いてある          新五合目から見上げる富士山


 登り始めてから人の多さを実感する。噂には聞いていたが、こんなに人が多いとは思わなかった。しかも、ほとんど山に登ったことがない人が大半を占めるのがこの山の特徴である。最初から飛ばしていった人はほとんど途中でバテていた。僕はいつも通り小股ピッチ歩行で進んでいく。登山道は砂礫の道が続くのだが、どうも靴が滑ったり沈み込んだりしてパワーをロスしてしまうので登り辛い。このため、砂礫に点在している石をできるだけ利用して登っていった。


砂礫の道は歩きにくい                                       混雑する8合目付近


 8合目付近で溶岩の岩場のような地形になるのだが、登山道が狭くて渋滞していた。今までは道が広かったので先行者を抜けたが、ここはそうは行かない。焦らず「これも休憩」と思うことにした。九合目の小屋は調子が良かったので通過し、九号五勺で最後の休憩。最後の登りは足に疲労が溜まり、少し息苦しくなったが、立ち止まりたくないのでピッチを落として登った。幸い高山病の症状は出なかった。多分自転車で登ったので高度順応ができていたからだろうか?

 
ようやく神社に到着                                        火口は深い


 9:25、ようやく富士宮に到着。お釜が見たいのを我慢してまずは神社で手を合わせる。富士山郵便局を覗いたのち、景色を見に行った。剣ヶ峰とお釜を見た瞬間、思わず「おおっ!」と声を上げる。剣ヶ峰は残雪が豊富で、お釜は想像以上に深く、火口壁は険しかった。今まで単調な風景を見ていたせいか、すごく変化に富んだ地形に感じた。記念撮影をして、いよいよ日本最高地点の剣ヶ峰へ。最後の登りは見事な深砂利で非常に登りにくかった。山頂直下はなぜか登山者で渋滞しているのだが、道の左側は空いている。不思議に思いつつ、左側を登っていくと、なんとその列は頂上の碑で記念撮影をする人の列だった。僕はとても待っていられない。こんなに混むなら石碑を2つ作ればいいのに。

 
剣が峰はすぐそこ                                         測候所のドームは撤去されていた


 9:42、ついに頂上に到着。海抜0mから3776mまで登りきった。しかし意外に感慨はなく、それよりも初めての山に登った新鮮さの方が上回った。周りの山は当然富士山よりずっと低いのだが、雲に覆われてほとんど見えなかった。それでも日本最高峰からの眺めはここでしか得られないものだった。思ったより疲れはない。これから下りはまた別の筋肉を使うし、降りてしまえばあとは楽チンな自転車下りが待っているので気が楽だ。さて、降りるとするか。腹ごしらえをして、念のため膝用サポーター「ひざかんたん」を装着し、砂礫対策のショートスパッツをつけて10:00下山開始。

 富士山の下りはとても効率が良い。砂礫が多いので膝にも優しく、みるみる高度を下げることができた。ただし、周りの登山者の迷惑にならずにいかに抜くかが難しかった。11:32、新五合目に到着。スパッツは砂埃にまみれてすっかり汚れてしまった。

 再びレーパンとビンディングシューズ姿になり、自転車の荷造りをするのに一苦労。オールコック氏のレリーフの前で記念撮影をして、下りスタート。下りはクルマに囲まれて楽しくない状態になるのではないかと思っていたが、ラッキーなことに片側交互通行規制されていて、その隙に通してもらったのでほとんどクルマと絡まずに降りることが出来た。ヘアピン地帯を抜けると、後はほとんど50km/hくらいでクルージングになった。下っても下っても続く坂道。さすがは標高差日本一のダウンヒルだ。ここでしかありえない。最後は灼熱の富士市街で我慢の走りをして13:23に田子の浦に到着。目の前に広がる夏の太平洋がお帰りと言ってくれたような気がした。出発から12時間23分振りに戻ってきた。

 
オールコック氏のレリーフ前で                                  12:23無事、太平洋へ帰還


 終わってみれば昨年の白馬岳より1時間以上早く下山できた。多分、自転車の距離が長いのと山登りの距離が短かったからだろう。今日は時間を気にせずマイペースに登ったのだが、特にトラブルは起きずスムーズに登ることが出来た。体力的にも思ったほど消耗しなかった。たぶんBASSO君とアミノバイタルのお陰だろう。特にBASSO君にずいぶんお世話になった。昨年からの課題が達成できて、個人的にはとても満足した山行だった。

本日のコース

【データ】
自転車登り:4:54(正味3:49) 平均12.2km/h
登山 登り:3:22 下り:1:32
自転車下り:1:23(正味1:20)平均35.9km/h、最高速度63.2km/h
登りトータル 8:42 下りトータル 3:23


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